補助金申請におけるマーケティングの活用のヒント

現在、中小企業庁が行っている中小企業向けの補助事業のうち、事業再構築補助金やものづくり補助金では、事業計画書の中で、開発や投資を行って得た資産を用いて、いかに事業を行い、収益を上げるかを詳細に説明する必要があります。また、小規模事業者持続化補助金では、販路開拓の計画を事業計画として作成する必要があります。

 補助金を用いて開発や投資をしたものの、マーケティング戦略や販売戦略がお粗末であるがために事業計画の目標数値を達成できない計画は数多くあります。

 今回は、そういった事態を避けるために、事業計画書の作成段階でマーケティングをどのように活用できるかを見てみたいと思います。

 まず、事業計画の売上数字に関して、その根拠を明確に示す必要があります。売上高を分解して、例えば飲食店であれば、「席数×回転数×平均単価」などにより売上高の見込みを計算します。ただ、目標とする客数をいかにして達成できるかについては、同地域の同規模の店舗の実績値や、統計からの平均値などを用いて根拠を示す必要があります。また、差別化やUSP(自社の独自の売り)を前面に出したプロモーションを行うことが成功への近道です。

宿泊業などでは、集客の手段別に売上高を積み上げて示す方法があります。グーグル広告から何人、メタ広告から何人、自然検索から何人、口コミから何人、リピートが何人など、計算して積み上げます。それぞれ、アクセス数の見込みと成約率(CVR)から、集客人数を導き出します。

他に、サービス業でチラシ配布のやり方を工夫した例があります。チラシの効果は、配布して結果を見てみないと分からない、というのが通常です。しかし、複数(通常は2種類)のチラシを作成して小規模にテストを行い、テストの結果、反応率の大きかったチラシを採用して、その後の宣伝に使用する、という方法があります。(その際、A,B同じ枚数を配布することと、A,Bチラシそれぞれの内容は一部分だけしか変えないことが重要です。)これをABテストといいます。ABテストを行うことにより、宣伝広告費を大幅に削減し、広告効果を大幅に高められる可能性があります。なお、反応率の向上は見かけよりも大きな違いをもたらします。例えば反応率が0.05%のものと0.075%のものでは、集客人数は1.5倍違います。集客人数は「チラシの配布枚数×反応率」になります。少しでも反応率が高い方が大きな成果につながることは明らかです。

このように、マーケティングの側面から売上高の根拠や集客戦略を示すことによって、事業計画の信憑性や実現性が大きく上がることでしょう。ただし、事業計画には確実に実行できる範囲で記載することと、実行時に外部の協力者が必要な場合は、その予定を事業計画書に織り込んでおくことをお勧めします。(T.T.