2023年4月に中国の上海に行ってきました。筆者は2019年6月以来の訪中で、飲食代金やコンビニでの支払方法が大きく変わっていました。
中国での支払は、モバイル決済(スマホ決済)が主流になっています。VISA等のクレジットカードは空港内やホテルでは使用できたものの、高級飲食店でも使用不可でした。中国版クレジットカードといわれる銀聯(ぎんれん)カードは使用できるようです。現金(中国人民元)はコンビニ等で使用できましたが、あまり歓迎されませんでした。
中国人スタッフや駐在員に支払方法を聞いたところ、通常スマホ決済を利用しており、中国イーコマース大手のアリババ(阿里巴巴)グループによる「Alipay」、中国インターネット企業Tencentによる「WeChat Pay」が一般的とのこと。
彼らの利用を見ているとメリットはありそうです。
・友達同士で送金が容易。
飲食店で支払の割り勘の際、任意の金額を相手に送金できるので、おつりは不要です。
・現金(お札)の持ち歩きが不要。
中国の最大紙幣は100元札(約1,900円、1元19円のレート)です。少し大きな買い物や高級店で飲食した際、現金払いではかなりの枚数のお札を持ち歩く必要があります。上海の夜にお酒を飲んで食事をすると、店にもよりますが、一人あたりで200、300元することもあります。
・店側の設備が現金レジに比べコンパクト
モバイル決済端末は設備自体が安く、省スペースで、おつり用の現金も不要です。
利便性はありますが、デメリットもあるそうです。
・セキュリティー問題
スマホののっとりや、QRコード詐欺などのリスクが懸念されます。
・スマホ動作が前提
スマホの遺失、電池切れ、電波障害や停電など利用できない状況もあります。
・金銭感覚の麻痺
あまりに支払が簡単なので、いくら使った、いくら持っているという感覚が鈍り、使い過ぎが問題になることもあるそうです。
スマホでかなりのことができるため、中国では財布を持ち歩かない人もいるそうです。ただし、スマホの電池が切れると何もできなくなるので、財布ではなく、モバイルバッテリーは持ち歩くそうです。
一方、日本の事情はというと、PayPayが増えてきたとはいえ、現金支払が多いように感じます。事実、MMD研究所が実施したアンケート調査1)では、普段の支払方法は、「現金」が85.6%、「クレジットカード」が70.8%、「スマホ決済」が49.8%となっています。
日本政府としては、2018年4月に経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」2)公表してから、キャッシュレス化の政策を推し進めており、2023年3月に、「キャッシュレス将来像に関する検討会 とりまとめ」3)(以降、報告書と略す)を公表しています。
報告書の冒頭、日本の支払の現状として、キャッシュレス決済比率は2021年度で約30%にとどまっており、キャッシュレス化が進んでいないと分析しています(主要各国のキャッシュレス決済比率は40%~60%台)。政府の目標として、キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度とし、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしています。
報告書では、キャッシュレス推進の社会的意義について触れており、キャッシュレス化によって現金支払の課題解決をあげています。ポイントは以下4点でしょう。
・消費者の利便性向上
「引出」「支払」「家計管理」を簡単・効率的に実施できるようにする。
・現金決済に係るインフラコストを削減
現金の「発行」「輸送」「管理」に係る社会的インフラコストを低減する。
・業務効率化/人手不足対応
事業者の販売や行政機関との手続き業務を効率化することで、人手不足を解消する。
・現金の保有や取引機会の減少による不正/犯罪抑止
窃盗・内部不正・脱税・犯罪組織への資金流入といった不正・犯罪の抑止ができる。
キャッシュレス化に関連づけられそうな補助金・助成金として、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金があります。補助金等施策利用にあたり、選定から補助金申請書作成支援まで私どもがお手伝いさせていただきます。
K・S
<参考文献>
1)MMD研究所「2023年1月スマートフォン決済利用者動向調査 第一弾」
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_2177.html
2)経済産業省 「キャッシュレス・ビジョン」
https://www.hkd.meti.go.jp/hokir/cashless/data/cl_vision.pdf
3)経済産業省 キャッシュレスの将来像に関する検討会 とりまとめ
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_future/20230320_report.html