EC取引に注意を ~ステルスマーケティングの禁止~

 本年10月、ステルスマーケティング(以下、「ステマ」という。)が景表法に基づき規制が強化されます。商品・サービスの広告・宣伝においてインフルエンサーの起用、SNSやアフィリエイトサイトの活用、レビュー依頼など、注意すべき事項が増えます。景表法とは、「景品表示法」の略称であり、正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」といい、「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為」を制限・禁止し、「一般消費者の利益を保護する」ことを目的としています。

 

 328日、消費者庁より「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定(以下、「指定告示」という。)及び「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」が公表されました。景表法第5条第3号に基づくものです。「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」とは、広告であるのに一般消費者には広告ではないように見える表示のことであり、ステマを指します。ステマを景表法の規制の対象とするとともに、その規制の基準が定められました。これまで、ステマを行うこと自体は景表法における禁止行為とはされていませんでしたが、ステマを行うこと、それ自体を規制することになります。

 

 小規模事業者であろうと個人事業主であろうと、ホームページを開設しEC取引を行うことは一般的なことになりました。指定告示の運用基準は、上記「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」に記載されていますが、特に注意しなければならない点について解説します。

(1)   事業者自らが行う表示

事業者本人だけでなく「事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示」も含まれます。つまり、商品・サービスの販売を促進する地位や立場にあるスタッフ(役員、管理職、販売員など)が、自身のプライベートなSNSアカウントなどに投稿を行う場合にも注意が必要です。

(2)   第三者に依頼する場合

問題になるのは「事業者の表示」です。事業者が、商品・サービスに関する何らかの表示を第三者に指示・依頼して、その「表示内容の決定」に関わっている場合、それは事業者の表示であることを示す必要があります。例えば、①インフルエンサーやユーザーに依頼するSNS・口コミサイトでの投稿、②商品・サービスの購入者やブローカーに依頼するレビュー投稿、③アフィリエイターに依頼する商品・サービスの紹介、などには注意が必要です。

(3)「事業者の表示」は明瞭に

   今回の指定告示における重要なポイントは、事業者の表示ははっきりと分かるように表示しなければならないという点です。「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった文言による表示、あるいは「A社から商品の提供を受けて投稿している」といった文章による表示が求められます。なお、事業者の表示を記載していても、それが消費者にとってわかりにくいものであれば、事業者の表示をしているとは判断されませんので注意してください。例えば、①「広告」と記載している一方で、「これは第三者として感想を記載しています。」といった記載があり、広告表示なのか否かがわかりにくい、②動画において、消費者が認識できない短時間・認識しにくい箇所に、事業者の表示である旨を表示する、③事業者の表示であることを他の情報に紛れ込ませる、などです。

 

 デジタル技術の進歩と変化の速さから「取引の実態や社会経済情勢の変化に合わせて、事業者等における予見可能性を確保できるよう、運用基準の明確化を図っていく」と運用基準に付記されています。悪意はなくても表示に関する不注意で、ステマのように見えてしまうということも起こり得ます。事業者としては、「事業者の表示」を常に意識して行動しなければなりません。(道)

 

【参考】

(消費者庁)「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準

 

https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms216_230328_03.pdf